最終更新日 2023/11/28

前立腺肥大症

前立腺肥大症とは・・・

前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう、benign prostatic hyperplasia)とは、加齢に伴い前立腺が大きくなる(肥大する)ことで排尿障害を引き起こす疾患である。好発部位は、前立腺の移行領域と呼ばれる部位である。

 

【症状】
前立腺肥大症では、排尿困難症状や頻尿排尿後症状(残尿感、排尿後尿滴下)が見られる。

 

【検査】
・自覚症状:国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアの症状質問票を用いる。
直腸診:直腸越しに前立腺に触れ、前立腺の大きさや硬さを確認する。
尿検査:尿の濁りや血尿、尿路感染症の有無などを確認確認し、ほかの疾患の鑑別を行う。
・尿流測定:尿の勢い、排尿量、排尿時間を測定することで、排尿障害の有無や程度がわかる。
・残尿測定:排尿後、膀胱内にどれくらいの残尿があるかを測定する。
・血清前立腺特異抗原(prostate-specific antigen;PSA):血液検査血液中のPSA濃度を測定する。正常値は4ng/dL以下。PSAは前立腺がんスクリーニング検査として有用とされているが、前立腺肥大症や前立腺炎でも数値の上昇が見られる。
・前立腺超音波検査(経腹的および経直腸的):前立腺の大きさや形態のほか、膀胱や上部尿路の評価を行う。

 

【診断】
検査の結果から、前立腺肥大症以外にないことを総合的に診断する。特に、前立腺肥大症では、前立腺がんとの鑑別が必要になる。

 

【治療法】
薬物療法、手術療法などに分けられる(無症状の場合は、経過観察)。
(1)薬物療法
・α1遮断薬(α1アドレナリン受容体遮断薬):前立腺平滑筋の弛緩を促し、尿道の閉塞を減少させる。副作用に起立性低血圧があることに注意が必要である。
・ホスホジエステラーゼ 5 阻害薬:α1遮断薬と同じ平滑筋弛緩作用だが、一部の心血管系疾患合併症の患者には投与禁忌である。
・5α還元酵素阻害薬:前立腺を縮小させる作用があり、前立腺肥大症に伴う症状を改善する。

 

上記のほか、抗アンドロゲン薬、抗コリン薬、β3アドレナリン受容体作動薬(β3作動薬)なども使用される場合がある。

 

(2)手術療法
薬物療法の効果が不十分、中等度から重度の症状、合併症が生じているもしくはその懸念がある場合に考慮される。
標準術式は経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate; TURP)である。ほかに、ホルミウムレーザー前立腺出術(holmium laser enucleation of prostate;HoLEP)など、さまざまな術式がある。

 

【原因】
原因は明らかになっていないが、最大のリスク因子は加齢による男性ホルモンの変化であるとされる。

 

前立腺が肥大することで尿道が圧迫される機械的閉塞と、平滑筋の収縮による機能的閉塞尿道抵抗により起こる。
また、下部尿路閉塞により二次的に蓄尿障害が生じることもある。合併症として尿閉、血尿、膀胱結石の原因となることもある。

 

【予防】
確実な予防法はないが、野菜や豆類に含まれているイソフラボノイドやリグナンは前立腺肥大症のリスクを減らす可能性があるとされている。

 

【引用・参考文献】
1)日本泌尿器科学会.男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン.リッチヒルメディカル,2017,p169. 
2)JS J Berry,et al.The development of human benign prostatic hyperplasia with age.J Urol.132(3),1984,474-9.

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