最終更新日 2023/11/28

透析

透析とは・・・

透析(とうせき、dialysis)とは、急性腎不全や末期腎不全の患者に行われる腎代替療法の1つである。半透膜を介して患者の血液と透析液を接触させることで、血液から水分や電解質などの過剰な物質を除去したり、体内に不足している物質を補充したりして、体液の状態を一定に保つための治療法である。

 

【適応】
透析導入の原因となる疾患の第1位は糖尿病性腎症、第2位は慢性糸球体腎炎、第3位は腎硬化症である1)

 

透析導入の指標として“AIUEO”という語呂合わせが有名である。
A:Acidosis(アシドーシス)
I:Intoxication(薬物中毒)
U:Uremic symptoms(尿毒症症状)
E:Electrolyte disturbance(電解質異常)
O:volume Overload(体液過剰)

 

各病態において明確なカットオフ値があるわけではない。特に尿毒症症状は自覚症状を評価するため、透析療法に従事する医師が総合的に判断して決めていることが多い。
急性期における透析は、急性腎不全に伴う“E”の電解質異常(主に高カリウム血症)や“O”の体液過剰(肺水腫)がある場合に導入されることが多い。
慢性期における透析は、末期腎不全に伴う“U”の尿毒症症状がある場合に導入されることが多い。

 

【どのような方法か】
慢性透析療法は大きく血液透析と腹膜透析に分けられるが、血液透析の占める割合が多い。
さらに血液透析はクリニックや病院で行う施設透析と、自宅で行う在宅血液透析に分けられるが、在宅血液透析はまだあまり普及していない。

通常、施設透析は週3回行う。
1回あたりの透析時間は4時間程度となることが多い。一般的に4時間より短い透析時間は予後不良因子とされており、ガイドラインでも4時間以上が推奨されている2)。透析時間を延長するほど除水速度を下げることができ、透析中低血圧の発生頻度を下げたり、体液管理の面で有利である。

 

(1)血液透析(HD:hemodialysis)
・原理:患者の血液を体外に取り出し(脱血)、ダイアライザー(透析器)の中で透析を行い、体内に戻す(返血)。
・方法:医療機関で行うことがほとんどである。1回4時間程度の透析を週2~3回程度行う。
・透析効率:高い。
・全身への影響:透析前後で体液組成の変動が大きく、心血管系や腎機能に負担をかける。残腎機能の低下が早い。
・継続可能期間:半永久的である。

 

(2)腹膜透析(PD:peritoneal dialysis)
・原理:患者の腹腔内に透析液を注入し、腹膜を半透膜として用い、体内で透析を行う。 
・方法:在宅で患者自身が施行する。透析は体内で常時行われ、毎日数回の透析液交換を行う。
・透析効率:低い。
・全身への影響:透析前後で体液組成の変動が小さく、心血管系や腎機能への負担は少ない。残腎機能も比較的長く保たれる。
・継続可能期間:腹膜が劣化するため、治療期間は5~8年が限度である。

 

 

【必要な検査】
(1)透析導入時の検査
前述の“AIUEO”に該当するものがないかどうかを評価する。
具体的には、血液検査で酸塩基平衡、電解質異常、腎機能増悪を評価する。また、経胸壁心エコー図検査や胸部X線、身体所見などで体液量の評価を行う。加えて問診で尿毒症症状の出現がないかどうかを評価する。

 

(2)透析導入後の定期検査
透析患者の定期検査では、透析前後で結果が異なるため、定期検査のタイミングを考慮する必要がある。血液透析(週3回)の場合は、中2日の透析前に定期検査を行うことが多い。腹膜透析の場合は中日という概念がないため、検査を行う時刻を可能な限り統一することが多い。

 

定期検査の目的は、合併症の評価と透析条件の評価とに分けられる。
・合併症の評価
感染症アレルギー貧血、骨ミネラル代謝異常、酸塩基平衡異常、電解質異常などを評価する。
透析条件の評価
体液量、酸塩基平衡、電解質、BUN、クレアチニン、β2ミクログロブリンなどを評価する。

 

 

【引用・参考文献】
1)花房規男ほか.わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在).日本透析医学会雑誌.55(12),2022,665-723.(2023年6月閲覧)
2)日本透析医学会.維持血液透析ガイドライン:血液透析処方.透析会誌.46(7),2013,587-632.(2023年6月閲覧)
3)志水英明.みんなが知っておきたい透析診療-透析のキホンと患者の診かた.medicina.56(9).2019.
4)医療情報科学研究所.病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第3版.メディックメディア,2019,p384

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